銀座の暮らし方

銀座で暮らすアラサー会社員の日記

家族で10年間通う特別なレストランのお話し

僕は経堂のとあるリストランテにオープン当初から家族で約10年通っている。イタリアで修行したシェフが、ランチもディナーも腕を振るってくれる店だ。シェフはとても誠実で、優しい人柄。ミシュランのビブグルマンに選ばれたこともあるくらいで、味も抜群に美味しい。僕は一人暮らしをはじめた時に、このレストランでランチがしたくて、隣のマンションに住んでしまった位だ。

 

そんな味のお墨付きがある店でも、10年の間には苦労もあったように思う。時には、

 

食べログに、その店では決してあり得ない内容でのネガティブな投稿をされるなど嫌がらせを受けたり(この件以来、僕は食べログのコメントは信じず、写真だけ見るようになった)

・しょうもないママ友軍団のランチの行きつけにされ、子供は注文もせず放し飼いにされてしまったり

・急なキャンセルをされてしまったり

・育った若手をイタリアへ修行に送り出して、分かっていたけど店が回らなくなったり

・シェフが腰痛と戦いながら厨房に立ち続けたり、、

 

急なキャンセルや売り上げにならない客が一定数を超えると、小規模店への影響は大きいだろう。席数には限りがあるのだから、変な客が入ればその分上客が入れないことになる。シェフの優しい人柄を見て、つけ込むような対応をする客を見ると憤りを感じることもあった。

 

オープン後間もなく生まれたシェフの息子さんは、もう小学生だ。レストランは、店のスタッフと客だけで成り立っているのではなく、スタッフを支える家族がいる。その家族が幸せな生活を送るには、一定の儲けが必要で、その儲けは客から得る必要がある。

 

自分のお気に入りの店があったとする。店に儲けを得てもらわなければ、いずれ店は潰れてしまう。誰が店の利益に貢献するのだろうか。どこかの誰かが沢山お金を払うから自分は利益にならない注文をしていればよいのだろうか。店に強く注意されないから、自分は水を飲んで、子供を放し飼いにして、周りの客に迷惑をかけていればよいのだろうか。

 

僕は、財布の中身には個人差はあるが、客側のモラルとして、店が営業を続けられる範囲でお金を落とすことが重要だと思う。サクッと飲んで予算は抑えめにするのも、フルコースでゆっくりするのもいいと思う。でも、気に入った店には、互いに継続的な関係を築けるよう利益をあげてもらう必要がある。

 

10年という月日の内に、僕は大学生からアラサーになって、テーブルからは祖母がいなくなって、姉の夫と甥っ子が加わった。甥っ子は、この店でテーブルマナーデビューをした。ここにいつか僕の妻や子供が加わるのかもしれない。僕は、最後の晩餐はこの店で家族と食事がしたい。

サービスが回らない時期には、やはり一時的に客も減る。10年間通い続けている我が家は、店のいい時もわるい時も知っているからこそ、定期的に通い続ける。 

 

自分にとってすばらしい店に出会って10年間通うと、その店は人生の様々な思い出が詰まった、かけがえのない場所になる。 この店に出会えた僕は、本当にラッキーだと思う。

10年間、いつも仕事熱心なシェフを職業人として尊敬している。シェフにはあまり無理をしないで、家族との時間、そして健康を大切にして欲しい。